こんにちは。ご覧いただきありがとうございます!
以前のブログでは、北海道・八雲町を訪れ、木彫り熊の制作を体験した様子をご紹介しました。
今回は同じ北海道でも、場所を移して旭川市へ。
旭川といえば「旭川家具」で知られる、国内有数の木工・家具産地です。
今回は旭川デザインセンターと北海道立旭川美術館を訪れ、旭川の木工文化について見てきました。
その中でも特に興味をひかれたのが、挽き物の木製マグカップです。
家具の産地・旭川と、漆器の産地・山中。
一見すると異なる二つの産地ですが、実際に展示を見てみると、そこには意外な共通点がありました。
家具の町・旭川へ
まず訪れたのは「旭川デザインセンター」。
ここでは、旭川地域で作られている家具やクラフトを一度に見ることができます。
旭川家具工業協同組合には旭川市だけでなく、東川町、東神楽町、当麻町のメーカーも加盟しており、地域全体で一つの家具産地を形成しています。
今回訪れた際には、「IFDA PROTOTYPE STORIES」という展示も開催されていました。
IFDA(国際家具デザインコンペティション旭川)は、世界中のデザイナーから家具のアイデアを募集し、旭川の作り手が実際の家具として試作する取り組みです。
展示を見て印象的だったのは、単にデザイナーが設計し、職人がその通りに作るという一方通行の関係ではないこと。
「この形を実際の木でどう実現するのか」
「デザインを崩さず、どうすれば十分な強度を持たせられるのか」
作り手とデザイナーが考え、試しながら、一つの形を作り上げていきます。
さらに、一社だけでは実現できないものを産地内のメーカーや加工業者が協力して作り上げることもあるそうです。
分業する職人同士が、それぞれの技術をつなぎながら一つの器を完成させる山中漆器にも、どこか通じるものを感じました。


▲旭川デザインセンター
ホームページ
旭川デザインセンター
住所
〒079-8412 北海道旭川市永山2条10丁目1-35
旭川で出会った「木の器」
旭川と聞くと、椅子やテーブルなどの家具を思い浮かべる方が多いと思います。
しかし、旭川で作られているのは大きな家具だけではありません。
今回、私が特に興味を持ったのが木製テーブルウェアでした。
展示されていた器を見ると、北海道の木材を活かした、シンプルで現代の生活にも取り入れやすいデザインが並んでいました。
そして、ここで気になったのが、
「ろくろを使って木の器を挽く」
という作り方をしているものでした。
これは、私たちの山中漆器とも非常に関わりの深い技術です。
旭川と山中、それぞれの「挽き物」
山中漆器の大きな特徴の一つが、木地師による挽物(ひきもの)の技術です。
木材をろくろで回転させ、そこに刃物を当てながら、お椀やカップなどの形を削り出していきます。
山中では、この木地挽きの技術が長い年月をかけて受け継がれてきました。
以前、守田漆器の木地師・泉谷郁美さんへインタビューした際にも、同じ種類の木であっても一つ一つ性質が異なり、その反応を見ながら刃物を扱っているという話がありました。
旭川の木工品と山中漆器。
作られる製品や仕上げ方、受け継いできた歴史は異なります。
それでも、
「木を回転させ、刃物で挽き、暮らしの中で使う器を作る」
というところには、大きな共通点があります。
北海道と石川県。
遠く離れた二つの土地で、それぞれ異なる木工文化が発展しながら、同じ「挽き物」という技術が生活の道具を生み出していることが、とても興味深く感じられました。
同じ木の器でも、表情は違う
一方で、完成した器を見比べてみると違いもあります。
次に訪れてみた“カフェとフラワー・クラフトの店「き花の杜」”と“旭川クラフトの専門店「CRAFT BROWN BOX」”では、木そのものの色や木目、柔らかな質感を活かした製品が印象的でした。
山中漆器の場合は、木地師が挽いた木地をさらに塗師へ渡し、漆を施します。
拭き漆で木目を活かすこともあれば、漆を塗り重ねて木地を覆い、黒や朱の艶を生み出すこともあります。
さらに蒔絵師などの手へ渡り、加飾が加えられる場合もあります。
つまり、同じようにろくろから生まれる木の器でも、
「木そのものをどのように見せるのか」
という部分には、それぞれの産地や作り手の考え方が表れているように感じました。
共通点を探すだけでなく、同じ素材や技術から生まれる「違い」を見比べてみるのも、ものづくりを見る面白さなのかもしれません。


▲き花の杜
ホームページ
き花の杜
住所
〒070-8045 北海道旭川市忠和5条6丁目5-3


▲CRAFT BROWN BOX
ホームページ
CRAFT BROWN BOX
住所
〒070-0822 北海道旭川市旭岡1丁目21−8
木を使うことと、山を育てること
もう一つ、旭川の挽き物の展示で印象に残ったのが、木の器と森林との関係についての考え方です。
木を山から受け取り、人が使う器へと変える。
そして、木を使うだけではなく、森林を育て、次の世代へとつないでいく。
普段、私たちは完成した木製品を見ていますが、その材料となる木にも長い時間があります。
これは山中漆器について考えるうえでも無関係ではありません。
漆器もまた、木を削って木地を作るところから始まるものづくりです。
「どんな木を使うのか」
「その木をどう活かすのか」
「木という限りある素材と、これからどう付き合っていくのか」
完成した製品だけではなく、そのさらに向こう側にある「山」にまで目を向けることの大切さを感じました。
木はどこまで表現できるのか ― 旭川美術館へ
旭川デザインセンターの後には、北海道立旭川美術館も訪れました。
ここでは、同じ「木」という素材が、器や家具とはまったく異なる姿になっていました。
例えば、板津邦夫氏の《麦秋》ではナラ材から山や雲を思わせる形が生み出されています。

▲《麦秋》板津邦夫氏
また、戸谷成雄氏の《森》では、米ツガの表面をチェーンソーで複雑に彫り刻むことで、自然の侵食を思わせるような荒々しい表情が作られていました。


▲《森》戸谷成雄氏
木目を活かし、滑らかな表面へ仕上げていく木の器とは対照的です。
しかし、
家具になる木。
器になる木。
彫刻になる木。
同じ素材でも、人がどのように向き合うかによって、これほど違う表情を見せる。
旭川でさまざまな木工に触れたことで、改めて「木」という素材そのものの面白さを感じることができました。
まとめ ― 遠く離れた二つの木工産地
今回、旭川の木工を見て特に印象に残ったのは、「挽き物」という技術が北海道にも存在していたことでした。
家具の町として発展してきた旭川。
漆器の町として発展してきた山中。
歩んできた歴史も、作っているものも同じではありません。
それでも、木という自然素材と向き合い、職人が培ってきた技術を現代の暮らしへつないでいく姿勢には、共通する部分があるように思います。
また、IFDAでは外部のデザイナーや産地内の作り手との協働によって新しい家具が生み出され、高橋工芸では家具づくりから培われた技術が木の器へとつながっていました。
伝統を残すということは、昔とまったく同じものを作り続けることだけではなく、培ってきた技術を活かしながら、その時代の暮らしに合ったものを考えていくことでもあるのかもしれません。
旭川という遠く離れた木工産地を訪れたからこそ、普段携わっている山中漆器についても、少し違った角度から見つめ直すことができました。
これからも各地のものづくりに触れながら、その土地ならではの特徴だけでなく、山中漆器との意外な「つながり」も探していきたいと思います。
ご覧いただき、ありがとうございました!
Y.M
